環境研究総合推進費 戦略的研究開発課題(S-21)

統合評価モデルとの連携による全国スケールでのシナリオ分析と社会適用

テーマ4 統合評価モデルとの連携による
全国スケールでの
シナリオ分析と社会適用

代表者 橋本 禅(東京大学農学生命科学研究科・准教授)

研究概要

  • 既存及び本プロジェクトで作成する将来社会経済シナリオ(例.SSP、NFFシナリオ)にもとづき、プロジェクト全体で用いる空間明示的な将来土地利用シナリオを作成する。
  • 将来土地利用シナリオのもとで想定される生物多様性保全ポテンシャル、再生可能エネルギー導入ポテンシャル、自然災害(洪水・土砂崩壊)への頑健性の評価にもとづき、各対策間のネクサス(シナジー&トレードオフ)を明らかにする。
  • 生物多様性保全と気候変動緩和、自然災害への対応の両立を促す、①OECMを含む保護地域、②再生可能エネルギー導入、③洪水・土砂崩壊に対する防災・減災対策のあり方や対策間の調整方策を明らかにする。
  • 土地利用調整を実現するための法定土地利用計画によるゾーニングが抱える課題を特定し、改善策を提案する。
  • JBO4、生物多様性国家戦略の中間評価や改定、国土計画等の見直しに有用な情報を提供する。
テーマ4の研究概要
テーマ4の研究概要

サブテーマ4-(1) 生物多様性・気候変動・自然災害対策の観点から持続的な土地利用の戦略

研究目標

 サブテーマ4-1は、テーマ4の総括として、サブテーマの研究成果を統合する役割を担うとともに、次に述べる研究目標の達成を目指す。まず、テーマ2が作成する社会経済シナリオのもとで、テーマ1の統合評価モデルと共同で将来の土地利用を空間明示的に評価する。また、テーマ1と連携し、将来の土地利用シナリオのもとでの生態系サービスを空間明示的に評価する。テーマ4のサブテーマ2~4と連携し、生物多様性対策(保護地域の拡大、OECMの導入を想定)、気候変動緩和対策(陸域への再生可能エネルギー導入を想定)、防災・減災(洪水、土砂崩壊を想定)対策の観点から求められる土地利用のあり方の情報を重ねあわせ、対策間の競合関係とその空間分布を明らかにし、競合する土地利用の調整方策を提示する。加えて、土地利用調整を実現するための法定計画(主に国土利用計画と連動する法定土地利用計画のゾーニングを想定)の課題を特定し、改善策を提案する。

研究概要

  • テーマ1、2と共同で、土地利用シナリオに求められる諸元(土地利用カテゴリ、空間解像度、等)を確定した。
  • テーマ1との共同で、統合評価モデルと土地利用モデルの接続や生態系サービス評価のために必要となる土地需要の地目方法やデータの受け渡しのタイミングについて検討した。
  • サブテーマ2~4との共同により、生物多様性対策、気候変動緩和対策、防災・減災対策の検討に必要な土地利用シナリオの空間解像度や地目、受け渡しのタイミング、データフォーマットを検討した。
  • サブテーマ2~4との共同により、本研究に有用と思われる地理情報のデータベース整備に着手する共に、データ受け渡しのための共有フォルダを構築した。共有するデータに、戦略的研究開発領域課題(S-15)及び他プロジェクトで作成した土地利用データ、生態系サービスデータ及び法定土地利用計画、土地利用・被覆、交通ネットワーク、人口分布などを含むものとする。
  • 複数の専門家により構成される研究会を設置し、既存の制度の運用実態の情報収集、検討に着手した。

研究メンバー

代表者:橋本 禅  (東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授)
分担者:黄 エンケイ(東京大学大学院農学生命科学研究科・特任研究員)  
    齋藤 智美 (東京大学大学院農学生命科学研究科・特任研究員)

土地利用・生態系サービスのシナリオ分析
土地利用・生態系サービスのシナリオ分析の枠組み
対策間のコンフリクト分析
対策間のコンフリクト分析:太陽光発電とOECMのコンフリクト評価例
※サブテーマ2~4との連携による
生態系サービスの評価イメージ

サブテーマ4-(2) 保護地域・OECM・自然再生等による生物多様性の保全

研究目標

 テーマ1で開発される統合モデルと、テーマ2の全国スケールでの社会経済シナリオ及び本テーマのサブテーマ1から提供される空間明示的な国土利用の将来シナリオに基づいて、生物多様性の状態の変化を予測し、シナリオごとの生物多様性保全効果を定量評価する。また、保全のために実施する施策オプションとして、人口減少下での国土の管理維持、放棄後の自然再生の実施、OECMの設定の3つを扱い、これらを実施する適地の特定と保全効果の評価を行う。テーマ4サブテーマ3,4から提供される再エネ適地や災害緩和のための重要地(自然再生有効地)の情報と、サブテーマ1で明らかになった生物多様性保全・気候緩和・防災・減災の各対策の間のコンフリクト評価の結果を考慮した優先順位付け解析を実施することにより、これらの対策のバランスの取れた保全対策適地の特定を行う。

研究概要

  • 空間明示的な国土利用の将来シナリオに基づいて、気候変動や社会活動を考慮した、生物多様性の変化の予測を行い、それぞれのシナリオの保全効果を全国スケールで評価する。
  • これらのシナリオ下で、生物多様性保全にかかる政策オプションを実施した場合の、追加の保全効果を全国スケールで空間明示的に評価する。施策オプションとして、特に主要な社会的変化である人口変化と関連性の強い、管理維持および自然再生、また、30 by 30 目標達成に直結するOECMの設定を対象とする。
  • 管理維持および自然再生の実施適地については、森林性であるか草地性であるかなどの生物種の生息地特性に基づいて、それぞれの対策を必要とする種の分布予測結果と対策実施コストに関わる要因(人口や土地利用状況等)を考慮しながら、優先順位付け解析により、適地を特定する。
  • OECM適地の特定においては、国土の30%を保護地域とする場合の保全優先順位付の結果と既存保護区とのギャップ解析を基礎として、さらにOECMの設定の容易さや維持管理可能性に関わる要因(既存の保護地域に準ずる制度の対象であるかどうか等)も考慮しながら評価する。
  • これらの評価は、まず生物多様性の観点のみで行った後、テーマ4(1)、(3)、(4)と連携し、再生可能エネルギー導入と防災の観点を考慮した評価を実施することにより、脱炭素・防災と両立可能な30 by 30およびネイチャーポジティブの実現のための保全策を提示する。

研究メンバー

代表者:石濱 史子 (国立環境研究所・主幹研究員)
分担者:深澤 圭太 (国立環境研究所・主任研究員)
    松葉 史紗子(国立環境研究所・特別研究員)
協力者:Payal Shah (OIST・リサーチサイエンティスト)

シナリオの保全効果の評価
シナリオの保全効果の評価
対策実施適地の評価

サブテーマ4-(3) カーボンニュートラルに向けた気候変動緩和策としての再生可能エネルギーの導入

研究目標

 高空間解像度の再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス等)の導入ポテンシャルを定量化する。その際、自然的・工学的・社会的な制約、自然生態系との共生に影響を与える制約などを考慮した供給ポテンシャルマップ群の作成を行う。
 それら再生可能エネルギー種別の導入に伴う環境・社会・経済への効果・影響を分析するための多基準評価モデルを開発する。それらの導入ポテンシャルと評価モデルに対して、テーマ2が作成するシナリオで描かれる人口・産業・経済・ライフスタイルから想定される再生可能エネルギー導入シナリオを空間明示的に定量化したデータプロダクトを構築する。
 その上で、サブテーマ2を中心としたサブテーマ間の連携で、再生可能エネルギー導入シナリオのもとで再生可能エネルギーの社会実装が生み出す効果やもたらす環境改善効果や生態系影響を多基準分析により評価し、シナジー・トレードオフを特定する。
 これらの結果をテーマ4内部で共有し、生物多様性保全、再生可能エネルギーの導入、自然災害の頑健性の向上の観点で求められる国土利用の適合性や要件の両立・競合関係のネクサス分析を連携し、生物多様性保全、気候変動緩和、自然災害への対応の両立を促す国土利用調整の戦略について検討することに貢献する。

研究概要

  • 脱炭素社会への移行の強い要求の中、再生可能エネルギーを主軸とするエネルギーシステムへの早急な転換が求められる。
  • その際、カーボンニュートラル達成と同時にネイチャーポジティブの希求も両立するべく、再生可能エネルギーの導入が持つ連環構造(nexus)を見極めなければならない。
  • さらには地域社会の将来ビジョンから目標を逆照射し、供給安定性や実行可能性、地域裨益、社会的包摂、自然生態系との親和性など、多面的な視座を持ってシナリオを描いた上で、適正技術・制度を設計する必要がある。
  • そこで本研究では、特に、再生可能エネルギーの導入、すなわちGoal 7: Affordable and Clean Energyについて、Goal 11: Sustainable Cities and Communities、Goal 13: Climate Action、Goal 15: Life On LandといったSDGsの連環に焦点を当てた、再生可能エネルギーミックス導入のための将来シナリオ設計支援環境の研究開発を推進する。

研究メンバー

代表者:松井 孝典(大阪大学・助教)
分担者:山口 容平(大阪大学・准教授)
    松村 悠子(大阪大学・特任講師)
    堀  啓子(滋賀県立大学・講師)
協力者:芳賀 智宏(大阪大学・特任研究員)
    山本 祐吾(和歌山大学・准教授)

気候変動緩和策としての再生可能エネルギー導入と生態系への影響評価
気候変動緩和策としての再生可能エネルギー導入と生態系への影響評価

サブテーマ4-(4) 自然災害に対する脆弱性・頑健性の評価

研究目標

(準備中)

研究概要

  • ハザード、曝露、脆弱性を考慮した災害リスク評価手法の開発と検証を行い、地域社会の自然災害に対する脆弱性と頑健性について、将来シナリオ毎に全国レベルで評価し可視化する。
  • テーマ2から提示される将来シナリオにもとづいて、グレーインフラ・グリーンインフラ等の国土利用に関連する各防災減災施策群の強度・配置効果について複数シナリオによる試行的評価を行い、地域特性に応じた土地利用最適化等の防災・減災対策を提案する。
  • 気候変動・生物多様性を考慮したマルチハザードリスク評価を踏まえ、それらが地域の脆弱性・頑健性に及ぼす影響を全国スケールで空間明示的に分析し、減災型土地利用を含む防災・減災のためのオプションを提示する。

研究メンバー

代表者:臼田 裕一郎(防災科学技術研究所防災情報研究部門・部門長・総括主任研究員)
分担者:佐野 浩彬 (防災科学技術研究所防災情報研究部門・研究員)
    遊佐 暁  (防災科学技術研究所防災情報研究部門・研究員)
    庄山 紀久子(茨城大学農学部・准教授)

気候変動・生物多様性を考慮した災害リスク評価手法の開発
気候変動・生物多様性を考慮した災害リスク評価手法の開発

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