環境研究総合推進費 戦略的研究開発課題(S-21)

地域スケールの生物多様性と社会経済的要因からなる統合評価・シナリオ分析と社会適用

テーマ5 地域スケールの生物多様性と
社会経済的要因からなる
統合評価・シナリオ分析と社会適用

代表者 吉田 丈人(東京大学・教授)

研究概要

  • 典型的な社会-生態システム(里山ランドスケープ、森里川海、都市・都市近郊)における地域版統合評価モデル・エージェントベースモデルなどを用いた地域研究と地域事例を比較するメタ分析により、社会経済活動や気候変動が地域において重要な生物多様性と生態系サービスに与える影響を統合評価する。
  • 地域特性を考慮した将来シナリオの分析など、地域スケールの主要な生物多様性と生態系サービスに関するシナリオ分析を実施する。
  • 地域の多様な関係者と連携する「地域連携プラットフォーム」を構築し、研究成果の共有などを通して、ローカルガバナンスの再構築に貢献する。
  • 研究対象地域での研究やメタ分析の成果を統合し、地域レベルの施策の関係評価や施策間調整のあり方の検討を行い、政策提言としてまとめる。
テーマ5の研究概要
テーマ5の研究概要

サブテーマ5-(1) 生物多様性と社会経済要因を統合したメタ分析と地域施策の比較検討

研究目標

 地域スケールにおける間接要因〜直接要因〜生物多様性・生態系サービスの主要な連関について、典型的な社会-生態システム(里山ランドスケープ、森里川海、都市・都市近郊)における一定数の地域事例を用いたメタ分析を実施し、連関の強さやパターンを評価する。
 また、間接要因と直接要因に対応する施策・取組み(介入策)の効果を評価する。テーマ5の総括としてサブテーマの研究成果や社会適用を統合する役割を担うほか、テーマ3と連携した生物多様性と社会経済の相互関係の分析や、テーマ1が進めるエージェントベースモデルの開発・適用など、テーマ間で連携した研究を進める。
 他のテーマと連携して、各種施策の関係評価や施策間調整のあり方などを検討し、政策提言としてまとめる。

研究概要

  • 地域スケールにおける間接要因〜直接要因〜生物多様性・生態系サービスの主要な連関に注目し、一定数の地域事例を用いたメタ分析を実施して連関の強さやパターンを評価する。
  • テーマ5の総括として、テーマ5サブテーマ間の連携を調整して、地域スケールの統合評価やシナリオ分析について研究成果をまとめる。

研究メンバー

代表者:吉田 丈人 (東京大学・教授)
分担者:饗庭 正寛 (東京大学・特任助教)
    小川 みふゆ(東京大学・特任研究員)
協力者:笠田 実  (東北大学・特別研究員)
    幸福 智  (いであ株式会社・主査研究員)
    富田 涼都 (静岡大学・准教授)
    西廣 淳  (国立環境研究所・副センター長)

主要な連関や介入策の地域間差異をメタ分析
主要な連関や介入策の地域間差異のメタ分析
ローカルガバナンスの再構築と環境政策等への貢献
ローカルガバナンスの再構築と環境政策等への貢献

サブテーマ5-(2) 里山ランドスケープを対象にした統合評価・シナリオ分析と社会適用

研究目標

 想定される間接要因として、佐渡市が直面する急激な人口減少(総数と構成)やガバナンス(脱炭素社会の実現)に注目し、それに関わる直接要因として、土地利用、農林業管理、土砂崩壊・洪水氾濫リスク、再エネ導入を取り上げることにより、地域特有の間接要因〜直接要因〜生物多様性・生態系サービスの連関を地域版統合評価モデル等を用いて分析する。
 得られた成果をもとに、地域連携プラットフォームにおいて市民や行政との対話を通じたシナリオ分析を展開することにより、より望ましい未来のあり方や求められる現実的な社会シナリオを導き出すとともに、テーマ内や他テーマと連携し、ローカルガバナンスの再構築として、生物多様性佐渡戦略の改訂あるいは新潟県自然エネルギーの島構想の実現に向けた具体的な政策提言を行う。

研究概要

 典型的な里山ランドスケープを有し、かつ急速な人口減少に直面する佐渡市を対象地として、地域特有の間接要因〜直接要因〜生物多様性・生態系サービスの連関を明らかにする。それを達成するために、具体的に下記の取り組みを推進する。

  • 水質、標高、日照などの立地特性を説明変数とした食味を予測するモデルを作成し、高品質米の生産可能な潜在的エリアを抽出する。
  • 耕作放棄地および管理放棄人工林の拡大に伴う、トキに代表される全島的な里山生態系の生物多様性の変化を推計する。
  • 管理放棄された農地および人工林の拡大に伴う全島的な土砂崩壊リスクの将来像を空間明示する。
  • 佐渡における脱炭素の実現に必要な再エネ導入の組み合わせと適地を検討する。
  • 新潟大学と佐渡市などで立ち上げているリビングラボ形式の「佐渡島自然共生ラボ」を地域連携プラットフォームとして活用することによりシナリオ分析を展開し、実社会の状況変化や地域ステークホルダーの認識を踏まえた、より地域社会に実装可能な社会シナリオを導く。
  • 以上の成果をもとに、テーマ5のサブテーマやテーマ4と連携し、地域レベルと国レベルの施策間調整のあり方などの検討を行った上で政策提言としてまとめ、ローカルガバナンスの再構築として生物多様性佐渡戦略の改定あるいは新潟県自然エネルギーの島構想の実現などに貢献する。

研究メンバー

代表者:関島 恒夫 (新潟大学・教授)
分担者:村上 拓彦 (新潟大学・准教授)
    柴田 嶺  (新潟大学・助教)
    吉川 夏樹 (新潟大学・教授)
    権田 豊  (新潟大学・教授)
    豊田 光世 (新潟大学・准教授)
    丸山 康司 (名古屋大学・教授)
    芳賀 智宏 (大阪大学・特任研究員)
協力者:斉藤 亮司 (株式会社サンワコン 東日本本部新潟事務所)
    小町 亮介 (株式会社サンワコン 東日本本部新潟事務所)

放棄地拡大による生物多様性予測
放棄地拡大による生物多様性予測
放棄地拡大による災害リスク予測
放棄地拡大による災害リスク予測
再エネ導入量見込みの予測
再エネ導入量見込みの予測
最適なシナリオを導く
最適なシナリオの選定
地域連携プラットフォームの形成
地域連携プラットフォームの形成

サブテーマ5-(3) 森里川海の連環を対象とした統合評価・シナリオ分析と社会適用

研究目標

 森里(川)海の連環を特徴とする宮城県南三陸町を対象に、農林水産業・バイオマス関連施策が地域の重要な生物多様性や生態系サービスに与える正負の影響を、地域の社会経済状況の把握と併せて評価し、地域が既に描き始めている、将来ビジョンをもとにシナリオ分析も行い、環境(生態系)・社会(人口、暮らしの質)・経済(地域内経済循環、所得確保)の持続可能性の鼎立に向けて、地域資源や地域経済が循環する地域社会の実現条件を提示する。
 また、これらの研究成果を集約して地域の情報プラットフォームを構築し、地域住民・各種産業・行政、地域外サポーターなどから構成される地域連携プラットフォームと協働で、情報プラットフォームが自発的に運用、活用され、地域の新たな価値創出(事業化)につなげる仕組みの構築を行う。
 これらの研究を通じ、南三陸地域が、自然・生態と文化を基盤としたローカルガバナンスや地域経済の再構築につなげるとともに、地域レベルと国レベルのガバナンス調整などについても他のテーマ・サブテーマと連携し、政策提言を行う。

研究概要

  • 地域情報プラットフォームの構築(地域の間接要因、直接要因と生物多様性・生態系サービスへの影響を地図情報プラットフォームに可視化)
  • 地域情報をもとにした、未来シナリオの作成と、地域内将来投資に向けた意思決定プロセスの構築
  • 将来投資への意思決定プロセスの構築をローカルガバナンスの再構築へつなげる

研究メンバー

代表者:重藤 さわ子(事業構想大学院大学・教授)
分担者:藤山 浩 (一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所・所長)
    高橋 康夫(公益財団法人 地球環境戦略研究機関・生物多様性と森林領域リサーチマネジャー)
    田村 典江(事業構想大学院大学・専任講師)
    新田 直人(一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所・研究部長)
    吉田 崇紘(東京大学 空間情報科学研究センター・助教)
協力者:太齋 彰浩(一般社団法人サスティナビリティセンター・代表理事)
    近藤 倫生(東北大学大学院生命科学研究科・教授)
    坂巻 隆史(東北大学大学院工学研究科・准教授)

地域情報プラットフォームの構築
地域情報プラットフォームの構築
未来シナリオの作成
未来シナリオの作成
地域内将来投資に向けた意思決定プロセスの構築
地域内将来投資に向けた意思決定プロセスの構築
将来投資への意思決定プロセス構築とローカルガバナンスの再構築
将来投資への意思決定プロセス構築とローカルガバナンスの再構築

サブテーマ5-(4) 都市とその周辺地域を対象とした統合評価・シナリオ分析と社会適⽤

研究目標

 都市の社会経済活動が都市およびその周辺地域において重要な生物多様性や生態系サービスに与える影響を、①都市の緑地における生物多様性、②都市河川における魚類の種多様性と外来性昆虫の侵入による生態系サービスの棄損、③食や格差問題を含めた都市型ライフスタイルが影響する生態系サービスに注目して、テーマ1と連携しながら、直接要因と間接要因を取り込んだ統合評価とシナリオ分析を行う。それらの研究成果を多様な主体が参加する地域連携プラットフォームで共有するとともに、行動変容や生物多様性地域戦略の施策などに貢献する。
 また、ほかのテーマと連携して、都市の社会経済活動が生物多様性保全への貢献につながる政策提言を行う。

研究概要

都市およびその周辺地域における生物多様性や生態系サービスについて

  • 都市の緑地種別ごとの管理形態が生物多様性に与える影響を分析する。
  • 魚類群集の時系列データ解析による種多様性変化要因の解明と外来生物の侵入・分布拡大リスクを管理する。
  • 生態系サービスを享受する都市住民による認知・評価と行動変容を促す条件を検討する。

研究メンバー

代表者:加我 宏之(大阪公立大学・教授)
分担者:平井 規央(大阪公立大学・教授)
    松尾 薫 (大阪公立大学・助教)
    平松 和也(大阪府立環境農林水産総合研究所・総括研究員兼生物多様性センター長 )
    相子 伸之(大阪府立環境農林水産総合研究所・主幹研究員)
    幸田 良介(大阪府立環境農林水産総合研究所・主任研究員)
    山本 義彦(大阪府立環境農林水産総合研究所・主任研究員 )
    原口 岳 (大阪府立環境農林水産総合研究所・研究員)
    石井 亘 (大阪府立環境農林水産総合研究所・主査)
    佐藤 真行(神戸大学・教授)
    内山 愉太(神戸大学・助教)
協力者:花田 眞理子(大阪府立環境農林水産総合研究所 ・客員研究員)

地域連携プラットフォームの構築と連携
地域連携プラットフォーム:⽣物多様性への影響(⼤阪市及びその周辺)の
情報共有と⾏動変容・施策適⽤

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