環境研究総合推進費 戦略的研究開発課題(S-21)

研究概要

研究の背景と目的

生物多様性の損失は、主に自然資源の直接的な利用、生息地改変、気候変動といった直接要因によって引き起こされるが、その背後にある人間の価値観・行動や社会経済活動といった間接要因にまで踏み込み、社会変革を図る必要がある。また、気候変動対策と生物多様性の保全・再生を同時に推進していくことが求められている。
そこで本研究は、生物多様性、気候変動及び他の社会経済的要因を統合的に扱い、対策の効果を定量的に評価するための統合評価モデルを構築することを目的とする。

全体目標

  • 生物多様性、気候変動及び他の社会経済的要因を統合的に扱い、各種対策の効果を定量的に評価するための統合評価モデルを構築する。
  • 統合評価モデルは、全国スケールと地域スケールのマルチスケールで構築し、その上で、科学的に検証可能なシナリオ分析に基づいて、地域循環共生圏や持続可能な日本社会の実現に貢献するための道筋を提示する。
  • IPBES、IPCC、TNFD、SDGsや生物多様性分野での地球規模の後継目標設定に関する議論に科学的な根拠をベースとして貢献する。

研究の内容とテーマ

本研究では、生物多様性の4つの危機を考慮して、国土利用(第1、2の危機に関連)、栄養塩(第3の危機に関連)、気候変動(第4の危機に関連)を直接要因として設定し、それらを駆動する社会経済的要因(間接要因)と合わせて、それらによる生物多様性・生態系サービスへの影響を評価する統合評価モデルを構築し(テーマ1から3)、それを全国(テーマ4)と地域サイト(テーマ5)に適用する。

テーマ1 : 社会・生態システムの統合評価モデル構築
アジア太平洋統合評価モデル(AIM)を拡張することで、陸域・海域双方の生物多様性や生態系サービスの予測評価(目標年次2050年)を可能にする統合評価モデルを開発し、全国・地域スケールでの活用を検討する。

テーマ2 : シナリオと介入策の組合せと評価手法の開発
環境研究総合推進費S-15でのシナリオ将来シナリオを踏まえて、プロジェクト全体で用いる複数の将来シナリオ(目標年次2050年)を作成し、シナリオ毎の直接要因と間接要因の基本フレーム(人口・国土利用・産業)、介入策の組合せを検討する。

テーマ3 : 価値・行動・文化と生物多様性の相互関係分析
日本の様々なランドスケープにおけるライフスタイルや価値観の投影としての生物多様性・生物文化多様性の関係を視覚化・類型化し、地域の生物多様性と社会経済の相互関係を明らかにする。

テーマ4 : 統合評価モデルとの連携による全国スケールでのシナリオ分析と社会適用
他テーマの成果ももとに将来土地利用シナリオを作成して、各対策間のネクサス(シナジー&トレードオフ)を明らかにし、土地利用調整を実現するための法定土地利用計画によるゾーニングが抱える課題解決に貢献する。

テーマ5 : 地域スケールの生物多様性と社会経済的要因からなる統合評価・シナリオ分析と社会適用
典型的な社会-生態システム(里山ランドスケープ、森里川海、都市・都市近郊)を対象に、社会経済活動や気候変動が地域において重要な生物多様性と生態系サービスに与える影響を統合評価して地域スケールでのシナリオ分析を行い、ローカルガバナンスの再構築に貢献する。

環境政策等への貢献

研究成果は、国及び地域の生物多様性戦略・関連政策、環境基本計画、国土利用計画等の見直しとともに、生物多様性と気候変動に関する国際的な科学的アセスメントと国際政策に活用する。


▲プロジェクトの全体構成
プロジェクトの工程

▲プロジェクトの工程

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